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【ネタバレ注意】 KILLZONE歴史年表

訳注

1. 地球時代 - 2055-2128

この時代は、人類が地球を唯一の棲家としていた最後の時期である。

1.1. 崩壊: 2055 - 2059

石油資源の枯渇に端を発し、国家間の資源争いが深刻化。緊張の高まりから遂に戦略核兵器の引き金が引かれ、核弾頭の応酬という最悪の事態に陥った。戦争は集結したものの、人類存続と資源確保のために抜本的な方策が必要なことは、正に自明であった。

1.2. 植民計画: 2060 - 2090

地球の天然資源が枯渇した以上、人類の存亡を懸けて、他の惑星への植民を進める必要があった。

政府、および潤沢な資金を持つ企業によってUCN (United Colonial Nations; コロニー国連合) と呼ばれる連合が結成され、人類が移住可能な他の惑星および衛星への植民計画が進められた。太陽系外の惑星への植民に向けて、解決すべき問題が数多くあった。

実際に船団を展開するまでに、実に30年以上の期間を要するものと見込まれた。資金上の都合からUCNは、未参画の企業や政府からの出資も広く受け入れた。また莫大な資金を持つ企業の中には、独自の植民計画を立ち上げるものもあった。これにはエネルギー・鉱物資源生産で財を築いたヘルガーン社も含まれていた。

UCNは各植民プロジェクトに対して厳格な規則を定めた。この規則に反することは経済制裁やUCNからの追放、さらには軍事行動にも値する大罪であるとされた。

1.3. 探索: 2095 - 2110

太陽系内の様々な惑星へ向けて、コロニー船が地球から旅立っていった。

植民を開始したこの時期、多数の新規コロニーを束ね上げ管理しきるほどの手腕を、UCNは持っていなかった。言ってしまえば、てんやわんやだったのだ。彼らは厳しい経済制裁と圧倒的な軍事力をもって、コロニーをまとめていた。

UCNは各コロニーから兵を召集し、UCNDF (United Colonial Nations Defense Force; コロニー国連合防衛軍) を結成していた。各コロニーも独自に軍を組織していたものの、UCNDFが最強の軍隊であると広く認識されており、過渡的な抑止力としてこの手法は最適であると考えられていた。

1.4. アルファ・ケンタウリ系の調査: 2111

10年の歳月を経て、最初期に地球を出発した船団がアルファ・ケンタウリ系に到着した。この系は地球から他の植民地候補への経由地点に位置するため、後に非常に重要な拠点となることになる。岩に覆われたアルファ・ケンタウリA周辺と、肥沃なアルファ・ケンタウリB周辺が植民地候補として挙げられた。

アルファ・ケンタウリ系の入植権はUCN自身が保有していた。交易の要衝となるその立地から、他の政府や企業へ入札を公開していなかったのである。

1.5. UCAの結成: 2113

UCNDFは兵力不足、腐敗、官僚主義の蔓延を理由に解体され、新たにUCA (United Colonial Army; コロニー国連合軍) が組織された。UCAは地球、および支配下の惑星において唯一法的に認められた軍組織となり、その最初の部隊としてUCA海軍が結成された。

1.6. 前兆: 2116

Archon, Triumph, Pacifica, Jericho, Seraph, そしてHarbingerの6隻からなるコロニー船団が、太陽フレアの嵐の中で消息を断ち、その後発見されることはなかった。船団からの最後の通信は船体の絶望的な損傷を伝えるものであった。

このコロニー船団を失ったことは、UCNにとって資金上の大きな痛手となった。同規模の船団を作り直せるだけの資金はなく、より小規模の船団では、植民自体が失敗に終わる可能性が高かった。窮地に陥ったUCNはアルファ・ケンタウリ系の入植権を入札にかけることを決定し、激しい競り合いの末、ヘルガーン社が入植権を手にした。ヘルガーンのコロニー船団が落成間近というタイミングであったことから、この入札で談合が行われていたとする主張もあるが、証拠は示されていない。ヘルガーンの落札の鍵は、Interplanetary Banking Guildからの資金提供であった。入植後、見返りとしてコロニーの総生産額の10%が支払われたとされている。

1.7. ヘルガーン、アルファ・ケンタウリ系へ: 2118 - 2127

ヘルガーンの人々の旅は決して楽ではなかった。冷凍睡眠装置も完璧とは言えず、最終的に2%の人々が道半ばで命を落とした。ヘルガーンと名付けられた惑星に接近し、科学者が分析したところ、生物が生きるには厳しい環境であることが判明した。莫大なエネルギー資源を持つものの、生態系があまりに貧弱であったためだ。ヘルガーンの軌道上には仮設の宇宙ステーションを建造し、志願した人々が留まって、地表の改質作業にあたることとなった。残りの人々は自らの命運を賭けて、ヴェクタと名付けられたもう一つの惑星を目指すことになる。この名は時のヘルガーン社のCEO、フィリップ・ヴェクタにちなんで付けられたものである。

2. ヴェクタ黎明期 - 2129-2155

2.1. ヴェクタへの入植: 2129

最初の船がヴェクタへ到着した。その後2140年までの間に、およそ12のコロニーが作られた。地球ほどの大きさであるヴェクタは、農業に適した牧歌的な星であった。豊かな森に育まれ自然の輝きに満ちた、言わば エデンの園 であった。農産物の生産量は急速に増加し、ほどなくして自給自足が可能な水準に達した。

2.2. ジャイアへの入植: 2133

アルタイア系の惑星ジャイアにコロニーが作られた。ジャイアはヴェクタよりも小さく寒冷で、大半を海に覆われ、数百万の小さな島々が点在する環境であった。

この最初のコロニーの運用から、中央司令部からの指揮ではコロニーの防衛が有効に行なえないことをUCAが突き止めた。これに対しUCNは新たにISA (Interplanetary Strategic Alliance; 惑星間戦略同盟) を組織した。UCNが訓練、装備、後方支援を提供し、ローカルコロニーが資金と兵士を提供するという形態の、防衛戦略同盟である。ISAの任務は徴税、治安維持、および地域防衛である。各コロニーのISA部隊はUCAでなくUCN直属の組織である。さらに他のコロニーのISA部隊とは独立関係にあり、兵力や予算の決定は各コロニーが独自に行なう。ISAアルタイアとISAアルファ・ケンタウリは、最初期に設立されたISA部隊であった。

2.3. ヘルガーンコロニーの安定化: 2135

コロニーが危うく全滅するような幾度の困難を乗り越え、 ヘルガーンの入植者達はコロニーの安定化に成功した。ヘルガーン上空の彼らの宇宙ステーションには、地球と他のコロニーを繋ぐ宇宙船が物資や燃料の補給、修理のために立ち寄るようになった。さらに他のコロニーへエネルギー資源の輸出を始めたことで外貨が転がり込むようになり、日用品や医薬品、食料を入手することができるようになった。

2.4. ヘルガーン保護領の設立: 2138

通信技術の発達により、ヘルガーンとヴェクタの間でのリアルタイム通信が可能となった。ヴェクタ行政はヘルガーン保護領の設立と、ヴェクタ行政による一元統治を宣言した。ヘルガーンの税収とエネルギー資源はISAを経由せずに直接ヴェクタの市場に流れ込み、ヘルガーンには食料と嗜好品が齎された。就業率は双方で95%を越え、人々の士気も急速に向上した。ヘルガーンとヴェクタの関係を示す新たな記章が作られた。この記章の3本の腕はそれぞれ平和、正義、自由を表すものである。

ヘルガーン保護領では、ISAもしくはUCN/UCAから独立した軍組織が初めて設立された。この組織は軽武装で規模も小さく、徴税や治安維持、および儀式のみを任務としていた。にもかかわらずISAはこれを脅威と捉え、規模と装備を厳しく制限していた。さらにこの軍組織の全ての兵士はISAから派遣されていた。

2.5. ヘルガーンのインフラ整備完了: 2149

ヘルガーンの荒れ地に、発電所や製造設備といった工業インフラが整えられた。ヘルガーン社は、コロニー船や地球へのエネルギー資源の輸出によって得られる外貨により完全に安定し、莫大な財力と権力を得るに至った。この時点で、地球におけるヘルガーンの存在感は大きくはなかった。ほとんどの取引がヴェクタを経由していたためである。

2.6. ヘルガーン民間政府の樹立: 2152

ヘルガーン、ヴェクタのコロニー管理が複雑さを増したため、ヘルガーン社は民間政府への移行を決定した。これは全ての地域行政をISAから引き継ぎ、課税体系や社会事業の再構築をも行なえることを意味した。しかし、宇宙船の建造や軌道上での活動、新たなコロニーの建設については、依然としてISAの規則により制限されていた。

2.7. アルファ・ケンタウリ系の買い上げ: 2155

ヘルガーンの政府予算は黒字を記録し続けており、災害に備えて余剰金が備蓄されていた。2155年までにこの備蓄はかなりの額に達していたため、ヘルガーン政府はISAに対し、アルファ・ケンタウリ系の完全買い上げを打診した。これはISAによる支援の対価といった名目で地球に対して支払っていた、年間生産額の10%分に相当する経済的負担から解放されることを意味した。

UCNは、以前であれば聞く耳を持たないところであったが、他の植民プロジェクトの財政負担が大きく、首が回らなくなっていた。UCNにとって特にデメリットなく当座の資金を手に出来ることは非常に魅力的であり、UCN評議会での採決の結果、賛成多数によりヘルガーン政府による系買い上げを認めることとなった。

3. 黄金時代 - 2156-2199

3.1. 黄金時代: 2156 - 2190

開発と課税の自由化により、経済および工業が急速に成長した。ヘルガーンの自動化された製造設備は拡大を続け、造船所は太陽系外最大の軌道上構造物となった。ヘルガーンは地球とコロニーの中継点として、最早どこへ向かうにも避けて通れないポイントとなっていた。ヘルガーン政府は通過する全ての船舶に対して課金を行なうようになった。彼らの言い分としては航路管理や遭難時の捜索・救出費用にあてるためのものだったが、事実上これは宇宙全体に課せられた関税であった。ヘルガーンを拠点とする船舶については課金が減免されたため、新たにヘルガーンに拠点を移す企業も現れた。

3.2. 緊張状態: 2198

ヘルガーンが船舶の航行や貿易に対する影響力を増すにつれ、UCNはそれを見過ごすことができなくなった。本来それらはUCNが管理していた領域だったからである。さらにUCNが進めている植民プロジェクトに乗じてヘルガーンが利益を上げている事実も、UCNは気に食わなかった。UCAはコロニーや通行する船舶に対する課税を強化し、その収入をUCAの拡大に充てた。その予算によりUCA海軍は新たに大規模艦隊や戦艦を保有するに至ったが、これは明らかに、武力をもってコロニーを制圧することを目的としたものであった。

またUCNは、ヘルガーンに対し認めていた権利の一部、特に軍組織の拡大と船舶への課税の権利を剥奪する決定をした。ヘルガーン政府は当初不服を申し立てたものの、首脳間協議で最終的に同意に至った。しかしながらこの対応は、ヴェクタの富裕層や有力企業から逃げ腰であるとして叱責された。

3.3. 脱退: 2199

度重なる協議にもかかわらず、交渉は決裂した。ひたすら遵法を要請する地球に対し、ヘルガーン政府は自らを独立したコロニーであると宣言して、正式にUCNを脱退した。

UCNは制裁として貿易封鎖も検討したが、これは逆効果になる見込みが高かった。ヘルガーンが地球に向かう船舶を単に足止めするだけで、資源の共有を断たれた地球が長くは持たないだろうことは想像に難くない。ヘルガーン周辺の航行拠点を確保するため、UCA海軍の武力を投入することが決まった。拠点の確保は同時にヘルガーンの封鎖も意味するため、問題解決の切り札になると考えられた。

4. 第一次外太陽系戦争 - 2199-2204

4.1. ヘルガーンによる軍事行動: 2200

状況が悪化するにつれ、ヘルガーン政府はISAを当初は吸収、後に排除する方向に行動した。ISA部隊の反撃により、各地で衝突が発生した。ヘルガーン軍は数では圧倒的優位に立っていたものの、装備と実戦経験が豊富なISA部隊は、巧みなヒット&アウェー戦法で戦況を有利に運んだ。

4.2. 第一次外太陽系戦争: 2201

2199年に出発したUCA海軍がヘルガーンに到着し、即座に航行ポイントの確保が行なわれた。主力はヘルガーンの封鎖に向けられたが、ヘルガーンの部隊が妨害を試み、武力衝突に発展した。

ヘルガーンの装備ではUCA海軍の軍艦に全く歯が立たず、戦闘は一方的な虐殺の様相を呈し、ヘルガーン側のほとんどの部隊が壊滅した。しかしこの戦闘において軌道上の巨大ステーションが突如、原因不明の崩壊を起こした。

UCAはヘルガーン部隊が地表へ脱出する際のサボタージュと主張、ヘルガーン政府はUCAが故意にステーションを攻撃したと主張し、その真相は不明であるが、結果としてヘルガーンがUCNに対して宣戦布告する事態となった。

UCA海軍は、ヘルガーンへの直接侵攻は資源と人命の無駄であると判断し、一部の部隊をヘルガーンに残して、主力はヴェクタへと赴いた。

4.3. 第一次外太陽系戦争の終結: 2202

ISAおよびUCA海軍の混成部隊がヴェクタへ到着。軌道上に潜伏していたヘルガーン部隊の残党を速やかに鎮圧した。ヘルガーン政府は当初、最後の一兵まで戦う覚悟を見せていたが、軌道への爆撃により圧倒的な戦力差を見せつけられ、降伏を余儀なくされた。ヘルガーン政府は閉鎖され、政府およびヘルガーン社の首脳陣の多くは逮捕された。脱出し身を隠す者も多くいた。

アルファ・ケンタウリ系からの報告を受け、UCN評議会がこの問題について協議した結果、ヘルガーンがUCNに歯向かった事実と、将来的な諍いを避けるために近傍にISA部隊を駐留させる必要があるという結論に至った。この草案に対して、ヘルガーン政府は最早全面的に同意する以外の術を持っていなかった。ヴェクタの行政はISAの手に渡った。ヴェクタのコロニー拡大のため、UCN市民の移住が始まった。

この反乱の残酷な結末は、他のコロニーにも深い教訓を与えた。UCNの統制と課税権に対して、異を唱える者はその後現れていない。

4.4. 抵抗: 2202 - 2204

ヘルガーンの過激派によるテロ活動が広がりを見せ、ISAによるヴェクタ占領の高い代償となった。ヴェクタに居住するヘルガーンの人々の多くはただ平和に暮らすことを望んでいたものの、過激派によるゲリラ活動を支持する者も一定数存在した。UCN市民に対する爆破、狙撃といったテロ行為が頻発し、最早ヴェクタは平和な楽園とは程遠い世界となった。

4.5. 出ヴェクタ: 2204 - 2210

ヴェクタを統治するISAは広がりを見せるテロ活動に対して、ヘルガーンの人々に対する厳しい弾圧をもって処した。心の行き場を失くした結果、ヘルガーンの人々は財産をはたいて古いコロニー船を購入し、かつてのもう一つの故郷であるヘルガーンへの移住をISA政府に懇願した。ISAもこれを認め、ISAに反発する多くのヘルガーンの人々がヴェクタからヘルガーンへと向かった。

ISAもUCNもコロニーの安定の代償を払うつもりはなく、 ヘルガーンの人々の将来を案ずることもなく、単にこの移住を快く受け入れた。さらにUCNはヘルガーンを正式に主権国家と認め、ヘルガーンを永久にこの国家の領地と定めた。また外交が安定するまでの間に限り、ISAによる貿易封鎖と統制は継続することとした。

4.6. ヘルガーンの大地への入植: 2215 - 2220

荒涼としたヘルガーンの大地は、楽園のようなヴェクタと比較すると正に地獄であった。移住当初、病と吹き荒れる嵐、そして飢えによって命を落とす者が多くいた。しかしその後10年の間に、環境への適応から死亡率は落ち着きを見せ、人々は徐々に難民キャンプを出て、生産活動に従事するようになった。

4.7. 苦難: 2220

2220年、各難民キャンプの代表者が初めて集い、行政としての意思決定が行なわれた。90%のキャンプが、それぞれが資源と労働力を共有し、協力して社会を再建して行くことに合意した。

医療問題、特に特有の放射線と嵐による健康への影響は、どのコロニーにとっても頭の痛い問題であった。ISAからの医療支援は無いに等しく、現地調達可能な物資は乏しかった。屋外で労働に従事する者にはマスクの着用が義務付けられ、いつしかそれが労働者のシンボルとなった。しかしマスクを着用していたとしても、 入植者が Lung Burn と呼ぶ肺の病が、30年以上に渡って最多の死因でありつづけた。

しかし悪いことだけではない。地中に莫大な鉱物資源が発見され、鉱山技師がヘルガーンにおける一般的な職となった。

4.8. ICSAからの接触: 2223

ヘルガーン行政が機能を取り戻し、居住に最低限必要なインフラが整った頃、ICSA (Independent Colonial Strategic Alliance; 独立コロニー戦略同盟) が加盟を促すためヘルガーンに接触した。ICSAはISAと似た同盟であるが、あくまで独立したコロニー同士の相互支援のための枠組みであった。ICSAはわずかな条件で多大な支援を申し出たが、この時には既にヘルガーンは外部からの干渉を頑なに拒んでおり、ICSAからの申し出を辞退した。

4.9. ヘルガーン黎明期: 2223 - 2305

ISAによる貿易制限によりヘルガーンの経済成長率は低調であったが、鉱物資源により一定の利益を上げていた。ヘルガーンの人々にとって栄養不足、劣悪な環境、厳しい労働は過酷極まりなく、平均寿命は短かった。この厳しさは逆に人々を奮い立たせたが、それ以上に、ISAからの制裁を甘んじて受け入れたヘルガーン上層部への怒りが、人々を駆り立てていた。

4.10. ISA軌道防御システム着工: 2304

資金のあるISAが、大規模艦隊の維持のために軌道防御システムの建造を開始した。これを受けてISAヴェクタはヘルガーン封鎖の任務から退いた。

4.11. 後継者: 2305

ヘルガーンでは、移住後3世代目にあたる世代が誕生していた。遺伝子調整と厳しい環境への適応の結果、重力、汚染物質、放射線により強い耐性を持つようになった。

4.12. スカラー・ヴィサリ誕生: 2307

後に専制君主となる人物が、ヘルガーン民族主義を信奉する家庭に生を受けた。後世に語り継がれているところによると、スカラー・ヴィサリは幼少期から思想家・指導者としての頭角を現していたとされる。

4.13. 大恐慌: 2330 - 2350

ヴェクタによるヘルガーン貿易の独占はヴェクタに多大な富を齎し、ヘルガーンへの再投資も行なわれていた。しかしヘルガーンの人口が増えるにつれ、食料や防衛費に資金が回されるようになった。その結果、生産設備の整備がおざなりになり、過酷な環境に耐えられず相次いで事故が発生した。古い機械の修理・交換に伴う生産停止を引き金に、20年に及ぶ経済恐慌に陥った。

ヘルガーンの経済学者は、この恐慌は貪欲なヴェクタに搾取に原因があると激しく非難した。ヴェクタも、ヘルガーンの資源を売買する闇市場が崩壊した影響で深刻な状態にあり、事態打開のために打つ手を持っていなかった。2220年以降で初めて、ヘルガーンで餓死者が出る事態となった。

5. ヘルガスト時代 - 2340-2357

5.1. スカラー・ヴィサリの興隆: 2340-2347

ヘルガーン経済の低迷と士気の低下の中で、後に専制君主となるスカラー・ヴィサリが、人々の支持を集め始めた。ヴィサリのイデオロギーは平易でありながら、抗し難いものであった。

我がヘルガーンの民はかつて、人間としてこの土地へやって来た。しかし我々は最早人間ではない。我々は変わった。長い旅路の中で外見を変え、この最果ての地で身体を変え、常に付き纏う苦難の中で精神を変えてきた。我々をこの土地に導いた為政者は、我々に建物しか与えることができなかった。人生も、前に進む意義も示せず、変化の重要性を説くこともできなかった。この世界が、我々を変えたのである。次は、我々が世界を変える番だ。

ヴィサリの雄弁さとカリスマ性は、不満を抱えた民を強く惹きつけた。彼の運動は瞬く間に民衆の間に広がり、このように解釈された。

我々は一つの種族であり、一つの国家であり、全ての侵略者に対して団結すべきである。

さらに重要なことは、ヴィサリが初めて示したこの思想が、後にヘルガーンの民の重要なスローガンとなるということである。

我々は完全に新しく、完全に優れた、 新人類である

彼は軍国主義、専制主義の優位性を主張し、これが後のヘルガーンの礎となった。さらに彼は、かつて労働者階級の象徴であったマスクをヘルガーン民族のアイデンティティと位置付け、何ら過去を恥じることはない、マスクは我々の勇気と不屈の象徴である、と説いた。民衆は貧富の格差を越えてヴィサリを支持した。

5.2. ヘルガストの誕生: 2347

ヴィサリは大衆に向けた演説の中で ヘルガスト という言葉を用いた。これは古英語の gast 、つまり霊魂に由来し、大いなる畏怖を暗示している。ヴィサリは、ヘルガストの民は最早旧人類とは異なり、ヘルガーンでの日々と苦難によって、新たな、生きる意義を持った種族に生まれ変わった、と説いた。出自はどうあれ、この言葉は民衆の脳裏に焼き付いた。

民衆の支持を得たヴィサリは軍事クーデターを起こし、専制君主の座に付いた。ヘルガーン政府から権限を剥奪し、ヘルガストに革命を齎すための期間として10年間を、軍部との交渉の末得た。

革命計画の第一歩として、ヘルガスト軍の拡大に着手した。さらに文化面での革命も行なわれた。2349年にはヴィサリによって英語の文書が禁止され、代わりにヘルガストアルファベットが考案された。ヘルガスト固有の言語への切り替えは言語学上の困難もあり実現していないが、言語の独自化はヴィサリの悲願であった。最後に、古いヘルガーンの記章はより単純で飾り気がなく、ダイナミックなデザインに変更された。この三本矢の記章はヘルガストの公式記章となった。矢はそれぞれ義務、服従、忠誠を表わし、ヘルガスト社会の新たな価値観を示している。

5.3. 新たなヘルガーン経済: 2350

ヘルガストはISAの貿易封鎖を搔い潜り、小規模の密輸から徐々に手を広げ、闇市場での取引をするに至った。当初は専らヴェクタとの取引のみであったが、ヴィサリは他のコロニーに対してもエネルギー供給を持ちかけた。既に縮小されていたISA部隊はこの闇取引にわずかな干渉しかできず、ヴェクタでは最早ヘルガーンの貿易封鎖は無意味ではないかという声も上がった。ヘルガストは、以前よりも小規模ではあるが輸送基地を再建し、本格的に対外貿易が開始された。ICSAとの間でエネルギー・鉱物資源の貿易協定が結ばれ、経済恐慌は公式に解決を迎えた。この取引は双方に多くの利益を齎した。

ISA上層部はこの時点でISA海軍の拡大を見送り、ヘルガストへの対応は保留された。

5.4. SD (Second Defense) プラットホームの着工: 2356

ヘルガストの軍備増強を受けてISA上層部は、建造後52年が経過していた防衛プラットホームを補完するため、第二期防衛プラットホームの建造に着手した。ISA司令官スチュアート・アダムスが指揮官として任命された。

6. 第二次外太陽系戦争 - 2357-2360

6.1. 侵略計画: 2357

スカラー・ヴィサリは、ヴェクタを再びヘルガストの手に取り戻す計略を練った。UCN/ISAによる入植は既に数世代の期間に及んでいたが、彼は復讐に燃えていた。ヘルガストの高官らもこれに同調し、成功の暁には彼を帝国皇帝の座に据えることを約束した。

ヴィサリの計画は単純明快だった。

  1. ISAのスチュアート・アダムス司令官を懐柔し、軌道上の防衛プラットホームを無力化する。
  2. ISAのドワイト・ストラトソン司令官を懐柔し、諜報機関を撹乱することでISA部隊を都市から離れさせる。
  3. ジョゼフ・レンテ将軍の元、防衛プラットホームが機能を失っている間にヴェクタへ侵攻する。
  4. 予想されるUCAによる支援艦隊を迎撃するため、防衛プラットホームを再稼働させる。
  5. UCAが体勢を崩している間にヘルガストによる支配を宣言し、UCNに承認させる。
  6. ヘルガーンとヴェクタの資源を利用し、さらに撃破したUCA海軍から技術を盗むことで、UCAからの攻撃に耐え得るようヘルガスト艦隊を増強する。
  7. 通行する船舶に対する課税を再開する。
  8. 地球を封鎖し、UCNを牽制する。
  9. UCA海軍の造船所と防衛艦隊を拿捕する。地球への資源供給を絶ち荒廃させる。軍備をさらに増強し、全宇宙からなる一大帝国を作り上げる。

6.2. 第二次外太陽系戦争の開戦: Early Aug. 2357

ヴィサリの計画は順調に進んだ。アダムス、ストラトソンの両司令官から、計画通りとの報告が入った。ヴィサリは大半の兵力をISA海軍の撃破に充て、残りをヴェクタ侵攻に向けた。

早い段階でUCA偵察部隊から警報が発令されたが、ISA部隊には迅速に届かず、その結果大打撃を受けることになった。UCNは状況安定のためにUCAの大部隊をヴェクタへ派遣することを満場一致で決定した。

6.3. レンテの敗北: Late Aug. 2357

この侵攻で双方に戦死者が出た。ヤン・テンプラー率いる4人のチームの働きのために、ヴェクタの首都陥落には至らなかった。ヘルガスト軍は足止めを食らったものの、それでもヴェクタ上には多くの兵力が残っていた。

レンテはかつての補佐官であったグレゴール・ハッカ大佐によって殺害され、行軍は妨害された。侵攻を手引きしたアダムス司令官も、UCA艦隊への待ち伏せを妨害すべくテンプラーらによって実行されたサボタージュにより、防衛プラットホームと共に散った。一方でストラトソン司令官はその正体を隠し通した。

6.4. メトラック将軍の着任: Sep. 2357

ヘルガストによって防衛プラットホームが無力化された事実を受け、ISA評議会は次期防衛プラットホームの建設の中断を決定した。ドワイト・ストラトソン司令官はヴェクタに残留するヘルガスト部隊を一掃すべく、核兵器の使用を進言した。問題の核兵器はレイホーヴェン基地に保管されていたが、その使用にはISA評議会の承認が必要であった。核兵器は常に禁忌と見做されていたため、その所持や、まして使用にあたっては、相当の政治的決断が要求された。

ヘルガストのメトラック将軍がヴェクタへ到着し、残存する部隊の指揮を担った。ヴェクタ南部に拠点を構え、ヘルガスト軍は再び勢いを取り戻した。

6.5. レイホーヴェン基地の陥落: Early Oct. 2357

メトラック将軍は問題の核兵器が保管されているレイホーヴェン基地に攻め入った。

一方ヤン・テンプラー大尉は、メトラックの基地を破壊したリコ・ヴェラスケスと共に、レイホーヴェン基地の兵力増強を担っていた。ストラトソンの正体が暴かれたが、ヘルガストは既にストラトソンの用意した核兵器と、兵器研究者エヴリン・バトンの施設から盗み出した数々の最新鋭兵器を手にしていた。

6.6. ヴェクタにおける武力衝突の集結: Jan. 2358

ヴェクタに残存するヘルガスト兵力が退却を始めた。賞金稼ぎを利用し、兵と物資をヘルガーンに引き上げた。

ヴェラスケス軍曹の部隊は、退却するヘルガストの戦艦からの情報収集にあたったが、この中でメトラックの反撃計画が明らかとなった。北部の平原で、最後の戦いが行われた。

ヘルガストの兵力はヴェクタから一掃された。 状況の安定に寄与したUCA艦隊は、ISAに以下の命令を下した上で退却した。

6.7. ヴェクタ評議会: Mar. 2358

ヘルガスト撃退の成功を受けて、ヴェクタ評議会は今後の対ヘルガスト政策を協議した。その結果、優先度順に以下の対応が決まった。

これは明らかにUCAからの命令に反する内容であったが、評議会は、これまでのヘルガストの扱いの非をUCNがヴェクタに押し付けようとしていると考えていた。

6.8. 大天使作戦: Sep. 2358

人類の歴史において最も複雑な軍事作戦を遂行するため、ISA部隊がヘルガーンに向けて出発した。

6.9. ヘルガーン侵攻の開始: Nov. 2359

12の部隊がヘルガーンに到着した。その内の一つ、Mandrake部隊は、ISAの一個師団と10の外国人部隊で構成されていた。ISA戦艦New Sunが旗艦となり、先の戦闘の英雄ヤン・テンプラー大佐が指揮をとった。Mandrake部隊は、人口が集中し貿易拠点でもあった首都ピュロスの制圧に向かい、ヴィサリ逮捕を目指した。

軌道上ではISA海軍とヘルガストの両艦隊の衝突も発生していた。ISA艦隊はヘルガスト艦隊を圧倒し、速やかに軌道封鎖に成功したが、同時にピュロスに設置された対軌道電子砲の脅威にも晒されていた。

この時点でISAは、UCAの命令に反してヘルガストを隔離し侵攻するというヴェクタ評議会の決定を再確認した。地上の行軍経路が確保され、侵攻の道筋が明確となった。ヴィサリはこの侵略に対する総力戦を宣言していたため、交渉による解決の可能性は無いに等しかった。迅速に事を進める必要があることをISAは十分に承知していた。

しかしヘルガストはそれまでの2年間準備に徹し、自らの故郷を守り抜く強い意志を築き上げていた。激しい市街戦により双方に多くの戦死者を出しながらも、ISAは徐々に首都へ向けて侵攻を続けた。しかし漸く首都の大半が陥落した時、核兵器Red Dustがピュロス中心部を直撃した。ISA部隊の大半が王宮への攻撃準備を進めている最中であったため、それら部隊の大半が壊滅した。ナーヴィル大尉率いる分隊は、ピュロスから離れた砂漠地帯で救援活動に従事していたため、幸運にも難を逃れた。この小分隊はその後他の部隊と合流し、王宮に対して死にものぐるいの総攻撃を仕掛けることになる。

王宮内外での壮絶な戦闘に辛くも勝利し、ISAのエリート部隊、アルファ部隊の2名が王宮へ侵入した。ピュロス防衛の総指揮官である 大佐と親衛隊を倒し、ヴィサリ逮捕のための王室へと突入した。

不幸にも、アルファ部隊のリコ軍曹が怒りに駆られヴィサリを射殺してしまった。その後すぐにヘルガストの大規模艦隊がISA艦隊を叩き、生き残ったISA艦隊も退却を余儀なくされた。この結果、地上の兵は取り残され、自ら脱出の道を探らねばならなくなった。

Mandrake部隊がピュロスを侵攻している間、他の部隊がどのような作戦に従事していたのか、その後彼らの身に何が起きたのか、取り残されたMandrake部隊の脱出を何故支援出来なかったのかは不明である。恐らくは、これらの部隊は停戦命令が出された後速やかに退却し、Mandrake部隊と同様の苦境には立たされていなかったと考えられる。

6.10. ヘルガストによる地球侵略の阻止: May 2360

ヴィサリの死後6ヶ月が経過し、ISAの残存勢力は熾烈な戦闘を潜り抜け、漸く脱出の糸口を掴んだ。ヘルガスト軍はヴィサリの後継者を巡って内紛状態にあり、この混乱に乗じてISA部隊はヘルガストの宇宙ステーションへ潜入、数隻の攻撃艇の奪取に成功した。ヘルガスト議会の議長でありストール社の代表でもあったヨハン・ストールは、地球へのペトルサイト弾頭による大規模爆撃によってUCNを降伏に追い込もうと計画していたが、ISA部隊の攻撃艇が試作戦艦を撃沈した。その結果積荷に含まれていた兵器が大爆発を起こし、その住民も、地球侵略の準備にあたっていた兵力も全てを巻き込み、ヘルガーンの大地を焦土に変えた。さらなる爆発を避けるため、ISA部隊は再度艦艇を奪取し、ヴェクタへ向けて脱出した。

7. 冷戦 - 2360-Ongoing

7.1. ヴェクタへの再居留

ヘルガーンの壊滅後、生き残った人々はヴェクタへの居留を認められた。しかし彼らは人類社会から拒絶され、隔離された環境で暮らし始めた。2つの種族はそれぞれの領地を巨大な壁で仕切り、不安定ながらも平和が訪れた。しかしながら、ヘルガストの人々の心には怒りが根強く残っていた。

7.2. 2381

テロ集団Black Handが新たな戦争を企て、ヴェクタ警備局の局舎を爆破した。機密部隊員のルーカス・ケランが事態の収拾を命ぜられた。

7.3. 2390

KILLZONE: Shadow Fallで描かれる出来事が起こる。